化学はおもしろい

ものを細かくしていくと

1 gの角砂糖を半分に割るとします.それをまた半分に……というのを繰り返していくと,永久に割りつづけていくことができるのでしょうか? 答えは「できない」です.約50回ほど繰り返したところで,それ以上割れないところまでたどり着きます.その一つ一つのものを分子といいます.では1gの角砂糖はいくつの分子から成り立っているのでしょうか? 半分ずつにするたびに,数は2倍になるので,

2 × 2 × 2 × … = 1000兆の100万倍

という途方もない数の分子が集まってひとつの角砂糖を作っているのです.

分子は細かくできるの?

実は,そのものの性質をもっている最小単位分子であって,分子はもっと細かくなります.それを原子といいます.原子はラテン語の頭文字1文字か2文字で表します.しかし,同じ原子を同じ数もっているからといって,同じ分子ができるとは限りません.原子はさらに原子核と電子からできています.原子核はプラスの電気をもっており,電子はマイナスの電気を持っていて,原子核のプラスの電気を中和することができる数の電子が原子核の周りに広がっています. 

元素と生物の不思議な関係

化学物質は元素周期表にある109種類の元素からなります. これらの組み合わせによって様々な化学物質が構成されます.

 地球上に存在する元素の割合をクラーク数といいますが,それは酸素が半分くらい,ケイ素が4分の1くらいを占め,炭素はそれに比べると極僅かです. ところが人体を構成する元素の成分はこれとは大きく異なり,酸素が3分の2で,炭素が5分の1くらいを占めています. 生物は有機物であるという証拠です. 有機物とは炭素からなる化学物質のことですが,もともとは生物由来の物質という意味です.有機物は英語でOrganicsですが, 生物を構成する器官は英語でOrganというようにそっくりです.

では,何故生物は炭素を利用するのでしょう? 例えば地球上に沢山あるケイ素ではだめなのでしょうか?  化学には不思議が一杯で,その不思議に少しでも近づこうとする化学の研究や勉強は本当に面白いです.しかし,化学の理解には実験が必要不可欠です. ところが実験は危険だったり,手間がかかります.物質工学科では安全で興味の持てるような実験を計画し,勉強してもらおうと思っています. 

21世紀は化学の時代

環境,資源,エネルギーは21世紀の大きな課題です.これらを解決するのが新素材やバイオテクノロジーで,これらは化学を基盤としています.

化学反応や生物を利用して貴重な資源の代わりになる物質を作り出し,環境を浄化し,エネルギーを作り貯蔵することができるようになります.

過去には自然の中から有用なものを探すだけであった医薬品も,より効果的なものを工場で量産するようになり,多くの人が恩恵を受けています.また,LED(発光ダイオード)によりエネルギー消費が小さく,水銀を含まない環境負荷の小さな照明が実現されました.さらにリチウムイオン電池の発達によるPCや携帯電話などの電子機器の小型化・軽量化はライフスタイルにも変革をもたらしました.

 美しい地球,そしてより豊かで安全な生活のために,化学に寄せられる期待は大きく,またその役割は大変重要なのです.